Tale『星が堕ちた夜』

スポンサーリンク

⚠️脱出マップ「星喰海歌」のネタバレを含んでいます。

未プレイの方は閲覧非推奨です。


「なあなあ。もしこの街から無事に出れたら、なんかやりたい事とかあるん?」

闇の街、屋根の上にて。

2人の少女が会話をしている。

「あら、私知ってるわよ。こういう時に夢を語る子は、その夢を叶える前に死んじゃうんですって?」

「たはは、そんなん信じとん?あんた、生真面目な子やと思ってたけど、案外そういうまじないみたいなんは信じるんやねぇ」

「なによ、私こう見えて映画とかにすぐ影響されちゃうタイプの人間なのよ?」

「えぇ〜、見えんわぁ〜」

けらけら。紺の髪の女が笑う。

少しの静寂。

「…とにかく、私はそんな良くないフラグみたいなことは言いたくないわよ」

「ほーん。そんなら、うちの夢から教えたろか?

うちの夢はなぁ、あんたと一緒に

︎︎

︎︎

ずばん

︎︎

︎︎

ざばぁ

︎︎

︎︎︎︎

︎︎

「「……え!?」」

︎︎異なるイントネーションで、2人の少女が同時に声をあげた。

見上げると、空に空間の裂け目のようなものがばっくりと開いている。

その裂け目から、まるで壊れた蛇口のように…水が際限なく吹き出し続けている。

…街が、みるみる間に沈んでいく。

「一体、な」

ぱちん。紺色の髪をした少女…の、隣の少女が消えた。

「え、ちょっとなになになに!?うちを置いて行かんといてよ!!」

少し涙声になりながら、取り残された巫女服の少女が叫ぶ。

これが報いなのか。

やっぱりこういう場所では、夢を語るのはまずい行為だったのだろうか。

どうせなら、最後まで言わせてほしかったけど。

…このまま自分は、波に呑まれて死んでしまうのだろうか。

……

︎︎

「…とか、思ってるんでしょ?

あのさ、それなら”からだ”ちょうだいよ」

︎︎

ぽふ。

目の前に突然、首から淡く光るペンダントを引っさげた、謎の薄い青髪の少女が現れた。

「うわぁ!!もう次から次へとなんなん!?うちなんかした!?君は何、神様!?仏様!?うわわかってしもた!閻魔様やろ!?」

めんどくさい錯乱の仕方をしている少女をなだめるように、1度「ふー」と細く長い息を吹いて。

「落ち着いて。私はこの街を創った人だよ。でももうこの街はいらなくなったから、こうやって沈めてるの。

それで、あなたに頼みごとがあるから、会話しにきたってわけ」

「…なんや、”人”なんやね」

「うん、ただの”人”だよ」

「じゃあなんで、うちの体を欲しがっとん?」

「このからだは、この世界でしか生きられないからね。君のからだを乗っ取らないと、私は別の世界で生きていけなくて」

「…ふうん、そうなんや」

それはそれは人間らしい回答だ。

人って、自分の幸せが最優先な生き物だし。

「…まあ、うん、ええよ。うちの体はあげたる。その代わり、うちの質問にいくつか答えてくれん?」

「え、ほんとにいいの?

少しは嫌がるのかと思ってたのに」

薄い青髪の少女は、存外そうに呟く。

「どうせ拒否権ないやろ?」

「あはは。じゃあほら、質問していいよ?」

軽く受け流し、催促する。

「そうやなぁー…まず、君の名前を知っときたいわ。名前も知らん子に乗っ取られるんはちょっとなぁ」

「そんなこと?いいよ。じゃあ、『あなただけに』教えてあげるよ」

︎︎

「私の名前は、█████スだよ」

︎︎

”お前達”に見えないように、青髪の少女は名前を伝える。

「へえ、なんかかっこいい名前やね?

こう、なんかの主人公って感じの」

「あはは。あ、この名前、他言無用だからね?」

「ええよええよ。どうせ、もう伝える相手なんてこの場所にはおらんからな」

少し寂しそうな目をしている。

そんな目をしても、あいつらが同情してくれる訳でもないのに。

︎︎

「じゃあ、次の質問やね。

きみは、なんでこの場所を作ってみたん?」

「それ、そんなに大事なことかなあ?

私はおとうさんに、小さい頃からずっといじめられてきたの。

だから、みんな私と同じ目にあっちゃえばいいんだって思って。

私と同じ、ひどい目に合っている人たちを観察するために、この場所を作ったの。」

︎︎

すん。小さく鼻から息を吸う音。

少し間を置いてから、巫女服は俯いた顔を上げる。

︎︎

「つまり」

︎︎

「楽しんどったんや?

うちらが苦しむのを見て。」

︎︎

「ピリついた感じの真顔やめてよ、怖いから」

少女はさらりと言う。

淡々と、突き放すように。

︎︎

「あんたのその我儘のために、あの街にどれだけの子供が呑まれたかわかってるん?」

「わかってるけど、どうでもいいなあ」

「こんな目に会うのは私だけでいい、とはならんかったん?」

「私に何一つ得がないじゃん。

私はやりたいことをする。

私はやりたいことをした。それだけ」

︎︎

「………」

︎︎

「…ほな、たぶん最後の質問かなぁ、これが」

「いいよ」

もうお互いに、笑顔はない。

︎︎

「あんた、もう死んでるんやろ?

ずっと死体が喋ってるもんな。」

︎︎

ああ。

……

あーあ。

︎︎

︎︎

︎︎

︎︎

︎︎

「あたり」

︎︎

︎︎

︎︎

︎︎

︎︎

もう、どうでもいいか。

最後の質問だし。

とん。指で、巫女服の胸の辺りを突く。

自分の精神を彼女の中に入り込ませながら、どうでもいい事を反芻していた。

︎︎

なんで、わかっちゃったんだろうな。

※投稿記事に含まれるファイルやリンクにより発生した被害についてクラフターズコロニーは責任を取りません
投稿通報

コメント

コメント通報