Tale『ぽせいどん』

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本Taleには、脱出マップ『綺々海々』のネタバレが含まれています。

未プレイの方は閲覧非推奨です。

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スヌーズ・プリンセピアは上機嫌だった。

1つ、自身の大嫌いな人間を滅ぼす決意を固めることが出来たこと。

1つ、滅ぼす前に唯一のお気に入りの人間を隔離することが出来たこと。

人間を滅ぼす際の唯一の胸の取っ掛かりが消えて、セピアはすこぶる上機嫌だった。

「ふんふ〜ん…♪どうやって滅ぼそうかなあ…あいつら弱っちい癖に頭だけは回るから、半端なやり方じゃ根絶できなさそう。一気に地球全土に回るような毒は無いしー……やっぱりドカドカ核爆弾を落とすのが1番いいかなあ。その間は私が海全域を守ってればそれでいいし……あー、でもでも、そんな量の爆弾はさすがに用意が面倒くさいなー…….」

と、セピアはニコニコと幸せそうな満面の笑顔で計画を呟いている。

ぷかぷかと海に浮かびながら、のんびりと人類根絶に向けた計画を練っていた。

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「ねえ」

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ぴくり、とセピアは反応する。海でもなく、陸でもなく、空に向けて視線を投げる。

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「きみ しあわせそうだね」

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セピアの見つめる先で、びしびしと空間が裂けていく。

少女の声が聞こえたはずのその場所から、…灰色の長くて太いチューブのようなものがぬっと現れる。

それは丸々と太ったアフリカゾウだった。凡そ5〜7トンとも言われるその巨躯が、セピアの真上から重力に従い無慈悲に落下してくる。セピアはつまらなさそうにゾウを一瞥し、

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『不可視の抗力に弾かれたように南西方向の陸地に向かって吹き飛べ』

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そうセピアが唱えている間、周囲の時間が走馬灯のようにスローに流れた。セピアが唱え終えれば、アフリカゾウは何かに力強くどつかれたように遥か彼方へと吹き飛んでいく。

一連の出来事が終えると、ひょっこりと空の隙間から水色の髪の少女が顔を出した。

「……あっれー?座標まちがえたかなー?なんできみ生きてるの?」

どこか悪戯っぽい笑みと共に少女は言う。セピアは少し興が削がれたような表情で少女を見つめ返す。

「誰。人間じゃないね」

次元の隙間から「ほっ」と身を乗り出し、セピアのいる空間へと侵入する。ふわふわと空に浮いている状態で、セピアを見下ろすように話しかける。

「そりゃそうだよー、私は神の眷属だもーん。私の名前はフローギアス。幸せそうな子を見ると殺したくなっちゃうんだー。だから、君は死刑確定!なんだ!あはは!」

あっさりとした表情で、フローギアスは言う。

「でも、見たとこ君も只者じゃないよねー?アフリカゾウは確かに君の真上に召喚されたのに、君は無傷でピンピンしてる。どころか、アフリカゾウがどこかに消えちゃってるんだもん!幸せそうなのは気に食わないから君のことはぜんぜん殺すけど、それはそーとちょーっとだけ気に入ったから、死に方を選ばせてあげる!ねー、好きな死に方とかあるー?」

と、フローギアスはぱっと両手を開けば、ナタや包丁からチェーンソーに縄のロープ、瓶の中でゴポゴポと不気味に泡立っている紫色の液体までズラリと宙に浮いて並んでいる。

「……」

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「『選ばせてあげる』?」

「なめてるの?」

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「舐めてるよ。きみは確かにアフリカゾウを回避できた。でもそれだけでしょ?」

返事を聞き終えたセピアの表情に影が落ちる。

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『包丁がぐるんと180度向きを変えてフローギアスの腹を向く。そのままドスリとおへその上に包丁が突き刺さってフローギアスはバタバタと悶絶する』 

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「へ」

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ぐるん、と包丁が向きを変え、フローギアスの方向を向く。次に起こることが何かを察したフローギアスは慌てて別の座標に包丁を転移させようとするが、なぜか権能が言うことを効かない。為す術もなくドスリと包丁が腹に刺されば、フローギアスは「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」と声にならない声をもらし、空中でバタバタと悶絶する。

「なっ、…….あ゛、」

「私の名前、スヌーズ・プリンセピアっていうの。別称『音姫』。私が具体的なイメージと共に音に乗せれば、そのイメージは現実になる。想像力が必要だから、ウラシマの玉手箱を作るのは一筋縄じゃいかなかったけどねー。気に入ってる人間が死ぬとこって、なかなか想像できないからさー……ね、聞いてる?」

フローギアスは相手の話なぞどうでもいいといった風に涙目になりながら、なんとか包丁を腹から引っこ抜いている。ブシュ、というビールの栓が抜けるような音と共に、フローギアスの腹部からは大量の血が吹き出す。

「…けんのう…、つかえなかった ……」

「……わたし、より、うえってこと…?」

「うん。ギアスって所詮神の眷属なんでしょ?私は海の神そのものだし。残念でした」

べー、とセピアが舌を出す。フローギアスは悔しそうにぎり、と歯を鳴らした後、ぶんと再びゲートを開く。

「……あー…わかったもん。きみには手を出さない。というか痛いの嫌だから、もう関わりたくないし。かえるね。ばいばい。」

げんなりとした表情で、フローギアスはゲートを潜る。腹部が青く光っており、いつの間にか腹の傷が治っていることがわかる。

ぶん、とゲートが完全に閉じれば、フローギアスから吹き出した血で少し赤く染まった海面とセピアだけが取り残される。

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「………」

ぺろ、と海面の血溜まりを舐める。鉄の味。次いで、あの少女の事を鮮明に思い浮かべる。名前はフローギアス。能力は恐らく「物体を任意の座標に転移させる」という能力。彼女が浮いている時、よく観察すると体がミクロ単位で振動していた。だから、彼女は浮いていたんじゃなくて、その座標に自身を召喚し続けていただけだ。

「うん。理解した」

そう呟くと、

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『フローギアスが私の北東、斜め上方向の海面上3mの場所に召喚される』

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刹那、水色髪の少女が再びセピアの頭上の斜め上に召喚される。あまりに突然の出来事にフローギアスは目を見開き、自身を空中に召喚する間もなくどっぱーんと海に落ちる。

「がぼ  っっ、」

水の中でフローギアスが目を回している隙に、セピアがフローギアスの首根っこを引っつかんで更に海の奥底へと引きずり込む。フローギアスからはゴボゴボと音が鳴っている。

地上の光が届かなくなってきた頃、セピアは自身の声を水の中に反響させる。

「あのさ。私人類滅ぼしたいんだけど、1人だと大変でさ。ギアスの力を借りたいんだけど、いいよね?いいなら手で丸作って。嫌ならずーっとこのまんま」

何か言いたげなフローギアスががぼがぼと藻掻いている。が、どれだけ暴れてもセピアは微動だにせず、無駄な足掻きだと悟ったのか苦しげに片手を震わせて丸を形作る。

「あは、ありがと」

セピアは首を掴んだまま、ぐいっと海面へと浮上する。ざばっと音を立ててフローギアスの顔が海面へと上がれば、激しく咳き込んだ後にセピアに問う。

「……なに、すれば…っ、いいの」

「何その顔。最初に殺しに来たのそっちだよね」

セピアはそう言うと、フローギアスの顔を自身に引き寄せてこつん、と額を合わせる。

「この地球全土に核爆弾を召喚してよ。人類を、陸地を根絶させて。陸地なんて地球上のうちのたった3割なんだよ?できるよね」

「………….出来はする、けど。時間がかかる。私の召喚は、知らないとこへの召喚はできない。だから、現地に私が行く必要がある」

「どのくらいかかるの?」

「……頑張って、半年、とか……」

「じゃあ4ヶ月でやって。出来なかったらあなたを沈めて苦しませて苦しませて苦しませて苦しませて殺す。わかった?4ヶ月でやってね」

「っは、話聞いてたの!?頑張って半年なんだよ、4ヶ月なんてむぐ」

セピアはフローギアスの口を手で掴む。

「話聞いてたの?ギアスは4ヶ月でやる事以外考えちゃダメなんだよ。4ヶ月で出来れば無事に解放するし、出来なければ海に沈める。ギアスがなんて言ったって、これは変わらないんだよ?こんな話してる時間も無駄でしょ。早く行ってきたら?」

ぱっ、とフローギアスを腕から解放すれば、フローギアスは再び咳き込みながらふわりと宙に浮かぶ。

「…これが終わったら、ミカさんに言うから。早く死んじゃえばいいよ。」

そう吐き捨てて、フローギアスは中指を立て、そうして……陸へと向かった。

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この世界を滅ぼしに。

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つんつん、と頬をつつく。

人間は嫌いだが、ウラシマだけは別だ。なんの抵抗もなく、接することができる。

…そういえば、眷属の亀たちが言ってたな。人間が人間に抱く、「スキ」って感情があるんだってこと。

私は人間じゃないけど…もしかして、これがそうだったりして。

…えへ。そうなのかなぁ。

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「っはぁ、はぁ……おぇっ…….地球全土、1億4724万km²……核汚染が完了したよ。文句、ないでしょ。ぅ゛ぇ…はやく、かえして、」

3ヶ月と27日後、フローギアスは再びセピアの元へと戻ってくる。フローギアスの様相を見て、セピアは満足げに微笑んだ。

「嘘はついてなさそうだね。ボロボロだけど、ギアスも核に汚染されたりした?」

「…そうだよ…何千個落としたと思ってるの…セピアはいいよね、ただ待ってるだけなんだから…」

「あは、そうでもないんだよ。これでも核汚染から海を守るために世界中の海を膜を貼って守ってたりしたんだよ?」

「……そう。じゃあ、早くかえして……」

疲労困憊でフローギアスは呟く。

「ところで、ギアスの力って便利だよねー。ね、うちの眷属にならない?そっちの主人なんて捨ててさーあ。待遇はよくするよ、悪くしないからさ」

ざわ。フローギアスの雰囲気が変わる。

「無理」

……

「そっか。ホントに無理そうだね」

セピアはそう言うと、「ほら、早く帰りなよ」とゲートの開門を促す。

フローギアスは最後までセピアを睨みながら、空間を無造作に開いて海を後にした。

セピアはこの結果に心底満足していた。フローギアスの事も、眷属にならなかったにしろ…いざとなれば、いつでも呼び出せる人材になった。あは、彼女からしたら最悪だろうな。

唯一ちょっぴり後悔している点と言えば、玉手箱を用意したことだ。コールドスリープ前に「死にたい」なんて言ってたから、ウラシマを想って用意した玉手箱だけど…よく考えると、やっぱりウラシマがいなくなったら寂しいし。

でも、かなり苦労してイメージして作ったものだし、簡単に捨てるのも気が引けた。損失回避バイアス?だとか亀たちは言ってたけど、難しいことはよくわからない。まあとにかく、あの玉手箱は今も捨てずに放置してしまっている。

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まあ、もうなんだって構わないや。

だって、人類は根絶されて。ウラシマと綺麗になった世界でまた喋れるんだから。

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だから、えへへ。

早く目を覚ましてね、ウラシマ。

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コメント

  1. これは…まあ百合だな!!
    百合スバラシイ!!!

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