Tale『絶望』

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⚠️注意⚠️

このTaleには、脱出マップ『NaPice』のHappyENDのネタバレが含まれています。

未プレイの方は閲覧非推奨です。

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「あはは!お姉ちゃんよわ〜い!」

「ぐぅ…くそ、もう1回だもう1回!」

楽しそうな声が家に響く。笑美と笑蘭は、仲良く背中を丸めてレースゲームをしていた。

偶然商店街で再会したあの日から、笑美は定期的にこちらに遊びにきてくれている。

「はぁ〜、”げーむ”って本当に面白いね!そうだ、お姉ちゃんノド乾いてない?取ってきてあげよっか?」

「あぁ、それはありがたいな。僕はオレンジがいいな」

「おっけー、まかせて!」

笑蘭はそう言って立ち上がり、慣れた手つきで冷蔵庫の中をまさぐる。

「んー…おろ?」

おかしいな、なかなかオレンジジュースが見当たらない。

ちょっと前に確かに入荷したはずなんだけど。

「とっ」

どんがらがっしゃーん。冷蔵庫の奥を覗きすぎて体勢を崩し、笑蘭は派手に転倒する。

「笑蘭!?大丈夫か!?」

大きな不穏な音を聞きつけ、笑美がリビングからすっ飛んでくる。ありゃ、お姉ちゃん、すごく顔が青白い。

「えへへ、体勢崩しちゃってさ…でも大丈夫だよ?ちょっとお腹は痛むけどさ」

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……

……?

言ってて違和感が生じた。

なんで仰向けで転んだのに、お腹が痛むんだ?

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「え゛」

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自分の腹部を見て、総毛立った。

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包丁が刺さっている。

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「あ゛ぅ」

急に、尋常ではない激痛を自覚した。

自分がそうだと思い込むと効果が増す現象…なんだっけ、プラシーボ効果だっけ?それは本当にあるらしい。

包丁がお腹に刺さっていると自覚した瞬間に、お腹が痛みを叫び始めたんだもん。

というか、おかしいでしょ。なんで包丁あるの。刺さり方もおかしいし。元から冷蔵庫に包丁が入ってて、それが落ちてきたとかじゃないと有り得ない刺さり方してるから。

「ぐ 、うぅ」

そうだ、違う、そんなことはどうでもいい。

とにかくお姉ちゃんに助けを____________

「お、ねえ、」

硬直。

「…ちゃん . . . ?」

”崩れていた。”

体がバラバラに、まるで氷がハンマーで砕かれた…みたいな感じで。

お姉ちゃんだった人の肉片が、そこら中に散らばっていた。

「ひっ、ぎ」

痛い痛い痛い、声を出すとお腹が震える。

なんなの、この状況。なんでお姉ちゃんが割れているの?もしかしてわたしは夢の中にいるの?早く覚めてよ、現実の笑蘭。きみは眠りが浅くなったんでしょ?

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「……」

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「. . . . . . だ れ、 か゛ . . . . . .」

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『どうしたの』

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「…?だ れ. . .?」

涙で滲む目を精一杯見開く。そこには白いフードを深く被り、首からペンダントを下げた謎の男が突っ立っていた。

もはや状況はカオスだけど、この際誰でもいい。たすけて、救急車を呼んで。もう私は、指を動かす力も出ない。

『……笑蘭』

男は近くまで駆け寄り、腰を落とす。

親指の腹と人差し指の側面で、笑蘭の舌を掴む。

「ぁが」

『助けが来た と思っちゃったんだ』

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ぶちん

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笑蘭の舌がちぎり取られた。

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「〜〜〜〜゛〜〜〜〜〜〜!!!」

『あはは、なんか言おうとしてるよ。喉に血が詰まってうまく喋れないみたいだけど』

痛い痛い痛い声がでない息ができない手が足が震えていたいいたいいたいいたい、

『新しいプレイヤーが来たんだよ。

だから、この”ハッピーエンド”を迎えたあとのプレイヤーの世界とは、もうお別れだ。』

…は

いやだ、だって、わたしはせっかくしあわせに

『嫌とかじゃなくて、誰かが新しくマップをダウンロードしたんだから仕方ないだろ?文句言うなよ。プレイヤーに縋りついて幸せにしてもらっただけの、1人じゃなーんにも出来ない甘ったれの癖にさ』

白フードはそう言って、笑蘭のちぎれた舌を持ったままの手でぴっと指名するような仕草を取る。

『さて、それじゃあ行こうか。たのしいたのしい”げーむ”を提供しにさ!』

「 、ぁ゛ 」

白フードは笑蘭の腹に刺さっている包丁を引っこ抜く。腹から勢いよく吹き出た血で、男のフードが赤く染まる。

笑蘭の意識が、闇に呑まれて______

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『そうだ、笑蘭。この会話を聞いている物好きなプレイヤーもいるんだよ?手でも振ってあげなよ!』

笑蘭はピクリとも動かない。


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「…やっほー、お目覚め?」

今回は4人か。みんな揃って、このげーむをやるのを楽しみにしている顔だ。こっちの気も知らないで。

”笑蘭ちゃんって言うのか”

”よろしくね〜”

好意的な声。うるさい私はお前達のせいで、またこっちの世界に逆戻りしてきたんだ。お前達がこのげーむに興味を持ってしまったせいで、このげーむを開いてしまったせいで。

だめだ、赤原笑蘭。この人たちのせいじゃない。全てあの白フードが悪いんだ。だから態度に出すな、押さえ込め、普段通り普段通り普段通り普段通り普段通り普段通り______

「…よう こそプレイヤー達!きみたちには、ここから脱出してもらう!」

一連の言い慣れたセリフをなんとか終えると、ようやく実感が湧いてきた。

ああ、そっか、やっぱり。

私は、逃げられなかったんだ。

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コメント

  1. あんなに頑張ってもこうなったんだ、、、
    あとフードの人誰?

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