Tale『–が消えた夏』

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⚠︎脱出マップ「凛命霞」のネタバレが含まれています。未プレイの方は閲覧非推奨です。


今日、県外の大学に行くために引っ越しの準備をしていたら、懐かしいペンダントが出てきてあなたを思い出してしまいました。

あなたならこの手紙を見てくださると信じているので、少しだけ綴ります。

︎︎

最初に出会ったのは、中1の春でしたね。あの時は、いえ今もですが、私はとても内気な性格で。クラスに馴染むこともできず、隅っこで一人うずくまっていました。

そんな時に声を掛けてくれたのがあなたでした。学校なんて隕石でも落ちて滅んでしまえばいいとさえ常日頃から思っていましたが、あなたに出会って私の世界はひっくり返りました。

楽しかったんです。お友達と遊ぶということは、こんなに幸せなことなのかと。

嬉しかったんです。「学校は楽しい?」と聞いてくる親に苦笑いすることしか出来なかったのに、あなたと出会ってからは笑顔で首を縦に振ることができるようになったから。

…だから、中3の夏。

あなたがトラックに轢かれたと聞いた時には、世界の全てから色素が抜けたような感覚に陥りました。

信じられなかった。トラックに轢かれるなんて、フィクションの世界の中で物語を盛り上げるためのものだと思っていたから。まさか、よりにもよってあなたが、なんで、どうして、

…とか。問題は何も解決しないのに、錆びついたように動いてくれない脳を、どうでもいいことに使うことしかできませんでした。

そして、私の希望の光はあっさりと消えました。ここからはあなたが知らないかもしれませんが、あのあと私は重篤な精神疾患を患い、入院することになりました。

私は覚えていませんが、入院中は自分の手のひらに向かってずっとあなたの名前をぶつぶつ呟いていたらしいです。…自分でも怖いですが。

するとしばらくして、夢を見たんです。

海に囲まれた灰色の島で、あなたと冒険をする夢。

私が”あなた”を装い、4人の見えない人たちを消していく。そんな、旅の夢を。

……

その後?……夢から醒めて。

現実に引き戻されて。

あなたの分まで、生きなくちゃって。

なぜだか、そう決めていました。

だから今、私は下手くそなりに生きています。

他の生きるのが上手な人たちに比べればまだまだ拙い人生ですが、それでも精一杯やっていますよ。

そうそう、最近のことですが友人に「Minecraft」というゲームをしている人がいて。

その友人に端末をお借りして、私の夢での経験を詰め込んだ”マップ”を作ってみたんです。

なかなかどうして難しかったですが、おかげであなたのことを思い返すいい機会にもなって、楽しかったですよ。

…ええ。私にも、あなたの他にも友人ができました。友人と付き合う楽しさは、あなたが教えてくれましたから。

︎︎

最後に。

これまた最近のことですが、ある神社に願掛けしにいったんです。

…そんな大した願い事は書いてありませんよ。

︎︎

「またあいたいです」と。

︎︎

一言、掲げただけです。

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