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このTaleには、脱出マップ『電柱』thirdENDのネタバレが含まれています。
未プレイの方は閲覧非推奨です。
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床の濁った血溜まりを呆然と見る。
最期に何か呟いていたが、聞きとることは叶わなかった。
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たった今、少年の腕の上で、母親が絶命した。
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「おい。”学級文庫”と言うんじゃ」
カテナは、俺の口に両指を突っ込んで頬を引っ張りながら言う。舐めてんのか。こいつ指冷たっ。
「…ほんほーにガキはな、おまえ」
「一度やってみたかったんじゃ!ほら言え!早く!」
カテナは尻の鎖を振りながら言う。
「おめー、この電柱からでたことねーはろ?どこでこんなんおほえたんはよ」
「あー?そんなんどうでもいーじゃろ、たく…興が醒めてしまうわい」
カテナは悪態を吐きながら指を抜く。
「むかーしむかしに、わしにコレを仕掛けてきた奴がいたんじゃ。はて、誰だったかの…」
「えぇ。こういう事すんのって友達とかだろ?忘れることなんてあんのかよ、薄情だなお前……」
「うるさいわい!お主の”昔”の基準と一緒にするな、ワシは人間とは時間の基準が違うんじゃ!!」
そーかよ、とジライが零す。本当じゃ、とカテナは口を尖らせながら返す。
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どこか楽しそうな、2人だった。
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ジジ、と視界にノイズが走る。
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「よう」
「あら。なんの用ですか?なんの用であれ、消えて頂ければとても嬉しいのですが」
2つの人影が会話をしている。片方は、頭に天使の輪っかをつけた、こう…「The・神様」みたいな感じの人。
もう片方は、白いフードを深く被った、悪意の塊。
「特に用は無いんだけどさ?たまにはこの世界を支える神同士、近況報告でもしようと思ってね。」
「…本当に下らない。帰ってください」
「良いだろ別に、俺もそっちが何してんのか気になるって」
「…あまりに執拗いと天啓を下しますよ。」
「あ?殺すのか?いいよ、やってみなよ、ホラ」
男は自身の首元を差し出す。天使の女は、まるで這い回る虫を見たかのような嫌な表情をする。
その表情を見て、フードの男が赤く光る眼を細める。
「いいね!その表情!俺大好きだよ、そういうの」
「私は」
女が口を開く。
「秩序を保っているだけ。平和を望んでいる人々に、幸せの道を用意しているだけ。あなたという災害から守るために、物語を減らしているだけ。やっている事は昔から変わらないんですよ?それなのに」
睨む。
「最近、絶対におかしいんです。幸せの道が削除されている。幸福と悲哀の均衡が傾き、色んな世界が崩れ始めている。あなたの過干渉のせいでしょう?崩れきってしまえば、あなたも存在出来なくなる。わかっていますね。」
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「何を考えているんですか?”ウシロ”。」
「それを答える義理はねえよ、”ミカ”」
2人の双眸が、紅く光る。
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ジジッ。視界にノイズが走る。
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「ねぇ。生きてる?」
オレンジのポニーテールをした女の子に声をかける。
「ぐあぁ……痛い……ってキミ、だれ!?かわいーーい!!ね、私アンって言うんだ!一緒に写真撮ろうよ!」
「へっ?え?え?」
困惑する私を他所に、アンはポケットからスマホを取り出し、私と身を寄せる。
「ほらほらー!笑って!ピースしてピース!いえーい!」
「えっ、えっと…こう?」
訳が分からないなりに頑張ってみる。
「いいねー!えへへ、いい写真とれた!ホラ!よく撮れてるでしょ?」
「あ、あはは……あのさ?一応その、私って人間じゃなくて、でっかい鎌もってて、肌も肌色じゃないし、その…怖くないの?」
「?なんで?だってきみ可愛いじゃん!知らないの?”可愛いは正義”ってさ!」
「そう……というか、ここに落ちてきたばっかりだよね?ここは人間が来るとこじゃないし、早く帰った方がいいよ?」
そう言うと、アンは少し困った表情を見せる。
「…えー。あのね、君が思ってるより人間社会って可愛くないよ?あんな場所に戻るくらいなら、この場所の方がよっぽど可愛い!」
アンはそう言いながら、タバコを取り出して火をつける。見たとこ未成年だけどタバコって。可愛いは正義じゃないのか。
「あ。今未成年でタバコを吸うなんて!とか思ったでしょ」
なんでバレてるの?
「学校とかいる間はいいんだけどさー。私家族いないから、家では口寂しくて仕方なくてさ。タバコ吸わなきゃやってられなくなっちゃって」
「で、気づけばニコチン中毒!学校とかでも屋上とかバレないとこで吸ってたりして。ニコ中って大変なんだよー?」
「…へえ。タバコを吸う理由にも、色々あるんだね」
そう言うと、アンは優しく笑いながら返す。
「そ。タバコ吸ってる人って、大体寂しがり屋さんなんだよ。だから、優しくしてあげてね」
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ジジ。視界にノイズが走る。
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「ねえ、ウシロ。そのペンダント何なの?」
「気になんのか?ただの運命の内包装置だよ。」
首から提げたペンダントを弄りながら笑う。
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「で、お前が幸せになれない証」
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視界に、ノイズ。
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電柱のゴミを管理している。
何も楽しくない。
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ゴミを管理している。
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ゴミを管理している。
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オレンジの髪の少女と会話している。
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ゴミを管理している。
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ノイズ。
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ノイズ。
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ノイズが赤く染まっていく。
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赤い髪の少年と、外の世界で会話をしている。
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ジジッ。ノイズが止む。
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暗闇。静寂。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。会いに来て。もう一度だけ話したい。もっと、ずっと一緒にいたかった。寂しいよ。
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走馬灯は人生のランダムルーレット。
私が見たい景色ばかり見れるわけじゃない。
もっと早く出会えていれば。
こんな縛られた空間じゃなくて、もっと別の場所で出会えていれば。
1秒でも長く一緒にいられて、もっと良い走馬灯が見られたはずなんだけどな。
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でも、そんなの我儘だから。
うん。君と外に出られて、たった数十秒で一生分の幸せを感じられた。
だから、それで十分だよ、バクダン。
あとは私の分まで、うんと長生きして、うんと幸せになってくれれば嬉しいな。
『封禁』。わたしのこと、思い出さないでね。
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