はじめに
2024年の3月のGDC(Game Developers Conference)で行われたMinecraftのプレゼンの様子が、10/1にyoutube上で公開されました。このプレゼンでは統合版のHead of Creator(クリエイター責任者)であるkaylaさんが、統合版におけるワールドやアドオンを制作するクリエイターに対する取り組みについて話されています。
このプレゼンは内容自体はもちろん、発言から開発者の考え方などが垣間見えて興味深かったため感想みたいなものをブログに書いてみました。
プレゼン動画については以下から確認できます。
Building the “Minecraft” Creator Platform Block-by-Block (youtube.com)
プレゼンの内容
大まかなプレゼンの内容は以下のとおりです。
- 自己紹介など
- JAVA版とBedrock版やマーケットプレイスについて
- クリエイターについて
–どのようにクリエイターになるのか
–クリエイター例(JAVAのマップ制作者からマケプレ作者になった人の話) - クリエイターのために挑戦していること
Feature(機能)
–開発における問題となった例
tpやuiの調整をしてムービー演出を作っていたことに対して、/cameraや/hudを実装したという話
–システムについて
複雑になったアドオンシステムの解決策としてCreator APIを作ったという話
Tooling(開発ツール)
–建築関連について、Chunkerやbedrock editorの紹介
–3DモデルツールのBlockbenchについて
Community(コミュニティ)
–ドキュメントについて
昔はドキュメントがなく情報が不十分で公式のドキュメントを作成した。
–プレビューでフィードバックを集めてることについて。
–discordやgithubでコミュニケーションしてる - まとめ
統合版におけるクリエイターとその取り組みについてかなり詳しく話されていました。
個人的に気になったこと
以下はこのプレゼンをみて私が個人的に気になったところや感想です。
※一部プレゼン動画からキャプチャした画像を引用しています。
クリエイターの成長
ここではプレイヤーがどのようにクリエイターとして成長するのかについて話されていました。私も含め、このサイトに投稿しているすべての制作者はHobbyist creatorsにあてはまるでしょう。
ここで気になったのは、このスライドにおいて「この矢印が動き続けることが重要だ」というような発言がありましたが、それは現状できていないのではということです。professional creators は文脈的にマケプレ作者のことだと思いますが、私が把握しているだけでも1年ほど前からマケプレの新規募集は停止しています。
すでにあるチーム(日本だとJCUなど)に参加することでマケプレに出品することはできるはずなので、まったく新規が入れないという状態ではないですが、正常な状態ではないのではと感じました。
ムービー演出
クリエイターの様子から機能を実装した例としてムービー演出を挙げていました。
ひと昔前は、/tpの連打やその他UIの調整などで、疑似的にムービー演出を作っていまいた。ムービー自体は素晴らしいが開発者にとってはそのようなコマンドの使い方は想定しておらず、これを解決するためにcameraコマンドやhudコマンドなどを実装したそうです。
私も昔はtp連打でムービーを作ったりしていたので、このあたりの話はすごく親近感がありました。実際にcameraコマンドなどはマップ制作者にとってすごく便利ですし、このあたりの話からはクリエイターが欲しい要素を追加するという姿勢がよく感じられました。
なお、tp連打のような強引な解決方法は「hack」と表現されており、やはり開発者からすると「hack」はあまり望んでいなさそうです。
余談ですが、以前私がXでポストした投稿のリプライでのやり取りの中で、同じようなことを話されているkaylaさんのリプライがあったのを思い出しました。
Script API
これらのスライドでは、エンティティやブロックなどのJSONのイベントや、コマブロやfunctionなどの処理系をScript APIに統一しましたという話をしていました。
すでになんとなく感じていましたが、開発側としては処理系をScript APIで統一していきたいという考えがあるようです。最近のブロック・アイテムのイベントはその象徴と言ってもいいでしょう。
現在でもすでに、統合版で発展的なシステムを作ろうとするとJavaScriptが必要になりがちですが、今後はこれがより進むのかもしれません。個人的にはプログラミングはそこそこ高い参入障壁になってしまうのではというのと、わざわざプログラミングまで勉強するとなるとUnityなどのゲーム制作ツールが競合となり得て、クリエイターが流出しやすそうなのが気になります。
ただ、コードを書ける人からすれば、アニメーションコントローラーでmolangクエリを条件としたステートマシンを構築したりするよりはScript APIの方が数段開発しやすいのは確かです。色々と機能が増えてややこしくなった今はその方がいいという考えなのかもしれません。
コミュニティとのやり取り
クリエイターのために挑戦していることの一つにコミュニティとのやり取りを上げていました。その話の中では、hiveと連携してchunkerを作ったり、bedrock devとコミュニケーションとったり、Blockbenchを支援したりと、開発者はかなり積極的にユーザー側のコミュニティとコミュニケーションをとっているようです。
このあたり私は詳しくなくて、おそらくすでに一部では知られている情報だったのだと思いますが、私は知らなかったので興味深かったです。Bedrock Add-Onsのディスコードに開発者がいて、定期的に開発者とのQ&Aセッションが行われていることや、いつだったかのMinecraft Liveで外部ツールであるBlockbenchを堂々と紹介していることの背景をようやく知れたといった感じでした。
個人的には、もう少し開発者側が身内でなんとかした方がいいんじゃないかと思わなくはないですが、開発リソースは限られているでしょうし、すでにあるコミュニティは活用しようという方針のようです。
後方互換と試験的要素
ここは私が気になったというより、制作者の方々に改めて周知すべきことと感じたため取り上げています。
コミュニティとの取り組みのところで、ユーザーからのフィードバックを取り入れているという話がありました。そのなかで試験的要素は後方互換を行わない、というような発言をされていました。
試験的要素というと、最近のホリデークリエイター削除が思い出されます。コミュニティが試験的要素が削除されるというのを想定しておらず、さまざまなアドオンで不具合が発生し、中には開発側に文句を言うようなユーザーもいました。
当たり前の話ではあるのですが、試験的要素ははあくまで試験なので、今後変わったり削除されたりする可能性が十分にあるものとコミュニティは理解すべきだと感じます。5年前とかならともかく、今では試験的要素を使わなくても色々できるので、配布物にはなるべく使わない方が良いでしょう。
逆に言うと、試験的要素でないコマンドやアドオンの後方互換については、開発者側もかなり意識していることがくみ取れます。
最初の方のマケプレ制作者に関する話でも、JAVA版から統合版に移行することで後方互換が維持されやすくなった、というような話がありました。たしかに、常に最新のバージョンで動かしたいなら、統合版のほうがいくらかましではあります(JAVAならバージョン止めたらいいのにとは思ったけど)。
とにかく、後方互換が開発者側でも意識されているというのは、我々制作者としては非常にありがたいことです。
終わりに
開発側の人からのマップ制作に関しての話を聞けるというのは大変貴重で非常に参考になりました。
この記事で紹介した内容はあくまで一部ですので、気になる方はぜひ動画をご覧ください。
Building the “Minecraft” Creator Platform Block-by-Block (youtube.com)
コメント
これは良記事